【一時帰国中に集中お稽古】外務省在ルワンダ日本大使館越智さん インタビュー

生け花教室にはいろいろな生徒さんがいらっしゃいます。
一時帰国中に短期集中レッスンをご希望の生徒さん(在ルワンダ大使館 越智さん)インタビューさせていただきました。

チョットお稽古見学

はじめて生け花のお稽古を拝見しました。
所作が美しい!が最初の印象です。
花を選ぶ、はさみを入れる、位置を考えて花を挿す・・・。
出来上がりはもちろん、そのプロセスを間近でみるだけで、凛とした気持ちになります。

―生ける花の長さは、測ったらいけないんですか?(インタビュアーは、フラワーアレンジメントを習っている生徒の母親です)

はからない、測っちゃいけいない。
なぜかというと、植物の個体差があるでしょう?
だから何センチとは決められない。

何センチと決めたら、ものすごく太いのがきたら大きすぎるから低めにするとか、細いのだったら長めに取らないとバランスが取れないとか、そういう理屈でしょうね。

主枝、副枝、側枝のバランスを取りながら 同じアレンジで、すっきり、中くらい、密集の3パターン生けていました(すごい!)。

花が一直線上に並ぶのは嫌がるそうです。

いよいよインタビュー

―ホームページを見て先生に集中レッスンをお願いしたそうですがその認識であってますか?

はい、その通りです。

SNSを拝見したのですが、お写真はルワンダで撮ったものですか?

ルワンダの日本大使公邸です。

―日本大使公邸?

「大使館」というオフィスと、大使の住んでそこでお客様をおもてなしする「大使公邸」と2つありまして、公邸におもてなしをする場がありまして。

― 首相官邸、みたいなイメージですか?

首相官邸がとても小さくなって簡素になった感じです。(笑)

― あれはどういう場面だったのですか?

大使公邸にお招きしたお客様です。
現地のUNHCR(国連難民高等弁務官)の現地事務所のヘッドの方。
アフリカ開発銀行・・・世界銀行のアフリカ版みたいなものです、そちらのヘッドの方。
FAO(国際連合食糧農業機関)、食料を通じた支援をするところですね、こちらのヘッドの方。

それぞれ皆さんセネガル人女性なんですけれど「『生け花なるもの』をやってみたい」と社交の場で話がありまして、生け花をお教えすることは出来ないものの、生け花体験みたいなことを・・材料を揃えるので楽しんで下さいという場を設定しました。

セネガルの場所
https://goo.gl/maps/SVkbQh35egW9GVJP7

ルワンダの場所
https://goo.gl/maps/7tLq1xSvBZJ7Fjsh7

―へえ・・・生け花は知られているんですかね???

はい、皆さんよくご存じです。
「生け花なるもの」がある、というか・・・。

―何か、ジャパニーズフラワーアレンジメント・・・みたいな。

はい、生け花は日本外交の中でも一生懸命広報し続けて、ウン十年です。

「生け花カレンダー」というのがあってですね、美しい月々の生け花の写真とカレンダーが一緒になっていて、全世界の日本大使館が一生懸命配っているんですね。

―日本の企業がカレンダー持って挨拶に行くみたいな感じで。

(笑)ああいう感じです。
東京から送ってきたカレンダーを、いつもお世話になっている方々とか今後もよろしくお願いします、という方々にお届けして、生け花を楽しんでいただけるよう、馴染みのあるものにしてもらうためにせっせとやり続けています。

―先生、知ってました?

(先生)イケバナインターナショナルくらいしか、知らないですね。

それを楽しみにしてくださっている方が多くて、世界津々浦々「生け花なるもの」が、何か西洋のものとは違うということが多くの方がご存じです。

海外広報の現状
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1963/s38-7-3.htm

イケバナインターナショナルIKEBANA INTERNATIONAL
https://ikebanatokyo.or.jp/

―写真を撮った時の感想は、どんなことを仰ってましたか?

「面白かった」と。
それと「ちゃんと習いたい」と。
生け花体験をやった時には、基本を説明するビデオを見て、のびのびやっていただく。
私自身、お花は30年前にやったことがあるだけで、教えられるほどではないので。

―それが未生流(みしょうりゅう:生け花の流派の一つ)だった?

(笑)そうです。

―だけど今回小原流の先生だったのは、どうして?

最初は未生流で探したのですが、東京の世田谷区でアクセス良くいけそうなところ、且つ1か月だけ東京にいるので私の都合に合わせて集中レッスン組んでくださいというようなお願いをできそうなところが、ホームページでは見つからなかったのです。
そこで、流派にこだわらず広くネット検索をしたところ、廣瀬先生のホームページを拝見し、この先生だったら私がこんな図々しいお願いをしても一蹴しないだろうと信じてメールを送りました。(笑)

―どういうところが一蹴しなさそうな雰囲気でした?

まず、生け花とフラワーアレンジメントと並列してあげていらっしゃる。

地域の子供さんへのアプローチも前面に出されているところが「うちは正統派でやっています」みたいなそういうところと趣が違うなと。(笑)

(先生)考えなしで出しているんだけどね。(笑)

―なるほど!ちなみにあの時に生けたお花の種類は ルワンダ にもあるんですか?

よくぞ聞いてくださいました!

リンドウは、日本人のビジネスマンの方が向こうで生産をして、ヨーロッパへ輸出をしています。

そのリンドウは、岩手県八幡平市の安代(あしろ)リンドウです。
安代リンドウの技術をルワンダに持って来て・・・ルワンダは1年中快適な夏の軽井沢がずっと続いて、雨が降って湿潤でお花の栽培、とくにリンドウの栽培にはこれ以上ピッタリなところがないみたいな感じなんです。

そこで作っておられる方がいて、去年であれば140万本ヨーロッパに輸出しています。
岩手・八幡平市、リンドウ生産で職員などルワンダに派遣
ブルーム・ヒルズ・ルワンダ
ルワンダ選手団は東京オリンピックの開会式 (23日)に安代リンドウの花をもって入場しました

―へー!ビジネスとしてうまくいっているということですよね。

はい、相当苦労されて今は大成功されています。

―それも使って、且ついろいろな機関のトップの方が生け花をやりたい!ということでちょうどよかったですね!

「リンドウプロモーション」を大使館としてやっておりまして・・・リンドウに限らず日本のビジネス支援というのが大使館の業務の一つです。

もちろん日本人の方の生命財産を守る領事も重要ですが、それに限らず日本のビジネスを世界に展開していくためのサポートを大使館として出来る事は積極的にやります。

―大使館は、パスポートをなくして困ったら行くところだと思っていました。(笑)

そうですね、そういうところでもありますね。(笑)

―ちなみに、生け花っぽいものがルワンダにあるという話は聞いたことありますか?

生け花は、ないです。

―ほかの国はどこに行かれました?

他に5か所勤務しておりまして、バングラデッシュ、ケニア、タンザニア、イタリア、カナダです。

―行っているうちの3つはアフリカですね?地理のテストみたいでしたけれど。(笑)今までも生け花が役に立ったなとありました?

カナダにいた2018~2021年、その時には広報文化を担当しておりました。
生け花展示会を大使館が主催し、イケバナインターナショナルのメンバー団体である小原流と草月流が半年に一回生け花の展覧会の場所を提供し、お客様をお呼びするという広報をずっとやっていました。

―イケバナ(IKEBANA)は、カラオケ(KARAOKE)と一緒で日本語がそのまま英語になっているという話を先生がなさっていました。本当にそうなんだなと、大使館の人から聞いたから絶対間違いないですね。日本にいる日本人は生け花を知らなさすぎるし、「ふ~ん」みたいな感じで尊いと気づかない・・・教えていただき、ありがとうございました。話は変わって、ルワンダのおいしいものは?

バナナ、アボカドも4つくらい種類がありまして、日本で食べられる小さいのよりもっと大きくてすごいジューシーなもの、皮が赤いアボカド。

あとはビーフがおいしいです。

ルワンダの人にとって牛がとても重要なので、牛乳は「ミルクバー」なるものがルワンダにはいっぱいあって・・・牛乳の大きなタンクが店にあって500ccで100円くらいでその場でグビグビと飲んで仕事に行く、みたいな。
飲むヨーグルトみたいにしたものもあります。

ビーフはおいしい、とにかくみんな牛が好き、日本の文化の中でお祭りなどで馬が重要だったりしますよね。
そこは何はさておきすべて牛なんですよ。

女性がきれいだと言うときも「あなたの目はまるで牛のように美しい」と言うんですよ。(笑)

―え~。(笑)日本で言ったらそれ誉め言葉なの?という感じですよね。さらに話は変わりますが、大使館員になるのはどうしたらいいんですか?

いろんな方法があります。
外務省の公務員試験を受けていただくのが一つで、大学や大学院を卒業して入ってこられるルートが一番多いです。

最近 、中途採用もドシドシ応募してくださいと言ってます。

あとは、派遣のような形で来ていただくポストがいくつかあって、そういうので働いていただいた後に内部の試験を受けていただいて職員になれる方もいらっしゃいます。

―どうして大使館員、外務省に?

外務省に入ろうと思ったのは、アフリカが好きで。

20歳の時にセネガルに行って植林に参加をしたのがきっかけで将来アフリカに関わる仕事をしたいと。
30年前、アフリカとのビジネスは基本開発か文化交流しかなかったんですね。
外務省試験をコツコツ勉強し合格して入りました!

―大使館員さんって、どんな生活ですか?

人それぞれでどこに勤務するかで全然違いますが、私が今何をやっているかというと、朝8時までに出勤し、日本とルワンダの関係がよい関係が維持されてより強化されるように、ひいては日本の発展のためにひとつの大きな基礎の一つになるという考えでルワンダの人たちと協力します。
JICA(ジャイカ)が優先分野、水、ICT、教育など・・・単独で援助するのではなく、日本外交としてこういうことをやるんですというもとでジャイカと援助活動をしています。

そうやってルワンダの政府、国民と協力し、現地にいる日本の方々、リンドウを作っている方々も含めて「困った!」となれば必要なサポートをします。

―ルワンダって内戦があったりしましたよね?治安は大丈夫なのですか?

1994年にありましたね
でも今はこれまでに勤務したどこよりも安全で、暗くなっても歩いて家に帰ります。
あんなに治安のいい国はなかなかないです。

―情勢不安定なところも大使館の方も行かなきゃならくて・・・ルワンダと聞いて最初「内戦」と思い出しました。

ジェノサイドを2度と起こさないという強い強い強い意志のもと、そのジェノサイドを終わらせた人が今大統領です。

もう2度とジェノサイドを起こさないということで取り組んでいます。

―ルワンダの紹介ありがとうございます!最後に、日本人の方にメッセージお願いをお願いします!

今回廣瀬先生にいろいろ教えていただいて、自分なりにこういう点がいいな、フラワーアレンジメントと違うなと思ったことがあります。

左右対称ではない、自然の中でどう草木が育っているかを大事にする、これが美しいのである、と。
西洋のように左右対称やこの色の組み合わせできっちりやるんです、ではない。
日本的なこういうのが美しい、いいよね、と感じるようなものが反映されているように私は感じました。

日本の良さ、日本にいる人たちが何となく共有して持っている良さとか美しいと感じるのが生け花を通じて世界に発信できると思っています。

※下記は越智さん手作りのルワンダの布で作ったお花入れです、素敵ですね!

先生からひと言

小原流の三世家元の小原豊雲氏がいけばなを海外に紹介し、国際親善に寄与しています。
そして現在も多くの国に小原流の支部があり、今も先生方が訪問されています。

そういえば私も昔、神戸新聞の主催でモナコ公国に国際親善の団員の一人として行きました。
小原流を4世家元が、デモンストレーションをし、モナコ開催の花のコンテスト?花の祭典だったか、出品し、賞らしきものをいただき、グレース王妃と握手しましたねー。
この時いろんな形の花、ミニサイズとか、に触れました。
世界は広いなと感動したものです。
私は花を通じていろんな経験をしてますねー。


取材後記

日本人が海外に行くと現地のものをありがたがるのと一緒で、異国のものは興味津々になるものです。
生け花に興味を持つ方が、遥か彼方アフリカの地にいることを素直に嬉しいと思いました。

相互理解、こんな文化が培われてきたことを知り、リスペクトすることがまさに平和の礎(いしづえ)になる・・・お互いの文化を知ることは、想像力ですよね。

そして生け花は日本人にとっていわば当たり前、昔の嫁入り修行の一つともとらえられがちですが、井の中の蛙、知らなさ過ぎたなあ、とちょっと恥ずかしくなってしまいました。(笑)

また、「らんまん」に出てくる槙野万太郎さんが、花を愛でているとあれば争いは起きない、的なこと言っていて、やっぱり花は人の心を癒すココロの薬だな、と心底感じました。
花の命をいただき、生気を養っているんだな、と。
自分の気持ちを安穏にする、ひいては世界平和のためお花は一役買っているんだなと思いました。